《コースタイム》
コンパス 5:30⇒中七番⇒上部林道入口8:25⇒ナスビ平付近10:35
⇒一ノ谷越⇒冠山1,732m 12:40(昼休憩~13:30)⇒平家平 1,692m 14:25
⇒鉄塔のある巡視路分岐15:10⇒中七番登山口(住友フォレスターハウス)17:10⇒コンパス
レポートは富永琢見さんです。《冠山を経て平家平へ》
雄大な平家平の山容、陽気と黄砂、それに残雪が心に残る山行きであった。
松山や高知の気温は20度を超え、黄砂が東北から九州まで
広く観測されたと報じられている。
中七番に建てられた「住友の森フォレスターハウス」を拠点にする。
ここからナスビ平まで上部や下部の道があるが、
伐採作業のため閉鎖されていた。

やむなく大永山トンネル口の林道起点まで返し、遠回りをした。

朝日を浴び、林道が尽きるころにはすっかり汗ばんできた。
補修の跡も真新しい小さな橋や、まだ崩落している斜面を
なんとか通り抜けながら高度を上げる。

所々に雪渓が現れてきた。
長いのは30メートルほど急斜面を下っている。
雪上の踏み跡を外さないように慎重に横切る。
アイゼンを要するほどではない。
体がほてり、たった今、この雪で冷やしたビールを
飲みたいなどと欲が出る。
このころから、日差しはあるのに空がぼんやりしてきた。
靄(もや)でなく霞(かすみ)でなく、遠望が利きにくい。
黄砂と判明したのは帰宅後であった。
天候の煽(あお)りを受けてか、鼻腔爽やかならぬ仲間もいたようだ。
ナスビ平近くで、待望のカタクリに出会った。
数株ながら葉を割って蕾が吹きだしている。
つんと立った紡錘形に命を秘め、毅然としている。
シャクナゲも叢生しており、これにも薄緑の蕾が認められた。
一ノ谷越まで登りつめた。尾根である。
展望は一変した。

右には、ちち山、笹ヶ峰、寒風山と連なり、
胸のすく笹原が広がっている。

コースを左に取って目の前に迫った冠山に向かう。
足下の笹は、膝より深い。
高知側の斜面から、帽子を飛ばすほどの風が吹き上がってくる。
程なく1732メートルの頂上に到達した。
我々12名のパーティーで占有してしまいそうな広さである。

登山口で迂回したため、遅まきの昼食となった。

次いで、尾根伝いに平家平を目指す。
繁茂した笹の中に踏み跡を見出しながら進む。
時に足を取られそうになる。

頂上に近づくと、緩やかな笹原を縫う小径が、
ようやく明瞭になってきた。

さながら楽園の佇まいである。
高知、愛媛の山並みを交互に見渡し、山座を確かめ合う。
長閑な情景を強い風が掻き消してゆく。

小休止の後、下山に移った。

送電線の巡視路分岐からジグザグに切られた道は、
かなり手入れされている。

高低差は700メートル余、ミツバツツジであろうか、
高みでは蕾にやっと色差すほどであったのが、
沢近くなると鮮やかに咲きそろっていた。
まさに山笑う好期、春色は一気に山肌を駆け上がるであろう。